■京都新聞|2015年11月25日(水)掲載

徘徊高齢者の位置を通知 滋賀の企業がシステム開発

電子チップが発する微弱な電波を不特定多数のスマートフォンでとらえ、行方不明になった認知症高齢者の早期発見につなげるシステムを、滋賀県栗東市のIT企業が開発した。
高齢者の現在地を把握すると、認知症保護の専門知識を持つ介護者や公的機関などに連絡される仕組み。29日に東近江市五個荘で実施される徘徊(はいかい)者保護の模擬訓練でシステムの検証実験を行う。

開発したのは、スマホアプリの開発などを手がける「ナスカ」(栗東市手原1丁目、井上昌宏社長)。県のイノベーション創出支援事業補助金を受けて開発したシステムは「みつけてnet」と名付けた。

徘徊が心配される高齢者に普段から身につけてもらう電子チップは、一般的なスマホで探知できる弱い電波を常に発信する。捜索に協力するスマホ保持者には、専用アプリを導入してもらう。 アプリを起動すると電波の探索モードになり、行方不明になった高齢者とすれ違うと、自動的に現在位置が携帯電話網を介して専用サーバーに送られ、介護者などに通知される。・・・

行方不明者を人海戦術で捜す場合、顔写真や服装などの特徴を多くの人に知らせる必要があったが、「みつけてnet」では個人情報を明かさずに捜索できる。 さらに、高齢者とすれ違った際に現在地が自動送信されるアプリからも所有者の情報は発信されない。「アプリを起動しておくだけで、知らないうちに人捜しに貢献できる」(井上社長)という。

徘徊時の発見用には、すでに衛星利用測位システム(GPS)で高齢者の現在地をとらえる発信器が実用化されているが、通信費が高価な上に端末が大きく、認知症の高齢者に身につけてもらうのが難しかった。 「みつけてnet」の電子チップは五百円玉サイズで、ボタン型電池で1年以上電波を発信し続ける。衣服に縫い付けることもできる。

29日の訓練では、徘徊高齢者役の7人にチップを身につけてもらい、協力する住民のスマホで捜索にあたる。 井上社長は「徘徊が心配される高齢者の行動を監視して縛るのではなく、匿名性を守りながら高齢者を見守れるシステムにした。行方不明者が亡くなる事故を防ぐことができれば」と話している。

参考URL:http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20151124000154

みまもり隊
滋賀ICT大賞優秀賞2017