■京都新聞|2016年2月10日(水)掲載

認知症徘徊 見守り一丸 守山市と県、発信器付け実験

守山市と滋賀県などが昨年末から、同市在住の認知症の高齢者2人に小型発信器を付けてもらい、 行方不明時に早期発見ができるかを確かめる実証実験を行っている。

栗東市のIT会社が開発したスマートフォン用アプリを使い、住民約1万2600人にダウンロードを呼び掛けている。 多くの機関が関わる実証実験は全国初といい、徘徊する認知症高齢者の人命救助を図る仕組み作りを目指す。 発信機を付けているのは速野学区の2人。市によると、同学区には新興住宅地があり、 町並みが似通っていることから認知症の人が迷い込みやすい。

早期発見ができれば他の地域でも同じ仕組みが通用するとして協力を依頼した。
アプリは、システム開発会社「ナスカ」が作った「みつけて.net」。微弱な電波を発する無線の発信器を靴ひもなどに結びつける。

行方不明時に、アプリをダウンロードしたスマートフォンが45メートル以内に近づくと、 同社を通じて市地域包括支援センターに連絡され、警察などと連携し捜索が開始される。

協力者のうちの1人の女性(81)は重度の認知症で、昨年3回行方不明になり、 家族や警察が夜まで10時間近く探し回り、市外で見つけたこともあった。
娘(52)は「夜に車を運転しながら探したが、見つけるのは難しく、もうあかんと思った時もある。アプリはとても今風で、見つけやすくなれば」 と期待する。2人が発信器をつけて以降、行方不明になるケースは起きていない。

発見には、アプリをダウンロードする「見守り協力者」の増加が不可欠。 現在のダウンロード数は約800台で、市は学区内10自治会を通じて住民に呼び掛け、守山署や市内のスーパー、タクシー会社など26団体でつくる 「市行方不明高齢者SOSネットワーク」にも協力を依頼した。

同市では本年度に入って23件の行方不明事案が起きており、約半数は市外で発見され、見守りの輪を広げる必要があるという。

実証実験は3月末まで行い、必要に応じて来年度も継続する。 県モノづくり振興課は「多くの人に認知症高齢者の見守りの大切さを理解してもらい、 捜索の網の目を細かくしたい。行政として費用負担のあり方も検証する」としている。
(田代真也)

みまもり隊
滋賀ICT大賞優秀賞2017